北アメリカに貧乏旅行して途中でお金が尽きたんだが…
話です。
半ば暇つぶしに近い旅行で、帰国したときに話の種になればいい
位の気持ちで西海岸からカナダに入ったときに、金が尽きた。
仕方が無いので、日本料理屋を見つけて働かせてくれないか?
と言っては見た物の人手がいるはずも無く、断られた。これまた
仕方が無い。近くの公園で野宿をしようと決め込んだときに、
件の日本料理屋のオーナーが、声をかけて来た。
「仕事は無いが、家に空き部屋があるから泊まりなさい」という。
有り難く受けた。次の日、出入り業者の配達の助手の仕事を見
つけてくれた。一ヶ月ほどで去ろうと思っていたのだが、オーナー
の子供(8歳)と仲良くなり、去りがたく半年近くも世話になった。
家族の様に接してくれて、半端な若造の私を街に溶け込む様にと、
ボランティアにも連れて行ってくれた。(これが本当によかった)
明日は、いよいよ別れると言う最後の晩に、知り合った人たちを
招いてささやかなパーティーまで開いてくれた。そのパーティー
が終わった後に、オーナー夫婦と話をした。自分がこの旅行を軽い
気持ちでしていた事、オーナーや街の人たちに甘えて来た事を恥ず
かしいと思っている事など。裕福でもない自分が、またこの街に訪
れる事もないであろうこと。そして一番気になっている事は、この
受けた恩をどう返したらよいのだろうかという事でした。そうすると
オーナーは言いました。「私も若い頃にドイツでとても世話になった
ことがあるんだ。君と同じ様にお礼がしたいと思った。その事を相手に
伝えた時に、言われた言葉がある。私はそれに従っているだけだ。」と。